産廃知識

これでスッキリ!廃掃法 第1巻 ‐廃棄物とは‐

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製造業界であれば、一度は耳にしたことがある「廃棄物」ですが、では「廃棄物」っていったい何なのか正確に答えることができますか?

工場から発生したものはすべて廃棄物でしょうか?ゼロ円で引き取ってもらったものは廃棄物でしょうか?引取り運賃がかかったものは廃棄物でしょうか?

答えは「場合による」という事になります。

ここをしっかりと理解しておくことが廃棄物管理において重要になってきます。

廃棄物の定義

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃棄物処理法 略称:廃掃法)での定義は第2条に記されています。

廃掃法 第2条
 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物をを除く。)をいう。
と定義されています

うんうん。法律ではそういう事かというのはわかるのですが、実際オペレーションするうえで廃棄物かどうかの判断って難しいですよね。そこで廃棄物に該当するかどうかの判断基準が設けられています。

廃棄物かどうかの判断基準

客観説

昭和46年10月25日 環整45号厚生省環境衛生局環境整備課長通知「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の運用に伴う注意事項について」(昭和46年10月25日公布)では
廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、汚でい、廃油、ふん尿その他の汚物又はその排出実態等からみて客観的に不要物として把握することができるものであつて、気体状のもの及び放射性廃棄物を除く、固形状から液状に至るすべてのものをいうものであること
規定されており、この説に従うと資源性があり有価で取引されるものと廃掃法の規制対象となるため、リサイクルの促進を妨げる可能性があると指摘がありました。

総合的判断説

そこで、昭和52年に下記のように一部改正されました。
昭和52年3月26日 環計第37号厚生省環境衛生局水道環境部計画課長通達「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について」では
廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になつた物をいい、これらに該当するか否かは、占有者の意思、その性状等を総合的に勘案すべきものであつて、排出された時点で客観的に廃棄物として観念できるものではないこと
と改正されました。

総合的判断が最初に採用された裁判

いわゆる「おから事件」というのが有名ですが、これは豆腐の製造業者から出るおからをどう扱うかというのが示された事件です。おからは一般的には総菜に使われたりしますので、廃棄物ではなさそうですが最高裁は「廃棄物」と判断しました。

「おから事件」最高裁判例(最二小決平成 11 年3月 10 日刑集 53 巻3号 339 頁)

概要

豆腐工場から排出された副産物である「おから」の委託処理を上、処理費を徴収して収集し、被告人の経営する工場まで運搬したのち、熱処理して乾燥させていた。被告人は県知事、市長の許可を受けていなかったため、無許可で産業廃棄物の収集運搬及び処分を業として行ったとして起訴された。

判旨

「右の産業廃棄物について定めた廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(平成5年政令第385号による改正前のもの)2条4号にいう「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。そして、原判決によれば、おからは、豆腐製造業者によって大量に排出されているが、非常に腐敗しやすく、本件当時、食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き、大部分は、無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており、被告人は、豆腐製造業者から収集、運搬して処分していた本件おからについて処理料金を徴していたというのであるから、本件おからが同号にいう「不要物」に当たり、前記法律二条四項にいう「産業廃棄物」に該当するとした原判断は、正当である。」

解説

おからは、良質なタンパク質を大量に含むもので、食料、飼料、肥料として販売されてきました。そのことから客観論で見ると、廃棄物には当たらないという事になりますが、今回の事件では、大部分は、無償で牧畜業者に引き渡されたり、有料で廃棄物処理業者に処理が委託されていたり、豆腐製造業者から収集運搬して処分するのに料金を徴収していたので総合判断説を採用し、最高裁は、おからは「廃棄物」であると判断しました。

まとめ

廃棄物の定義は現在は「総合的判断」が基本となっています。
排出事業者から出されるものには有価物もあるかもしれませんが、時代に合わせて価値が変わってくるものもあります。1年前までは有価物だったものが、総合的に判断すると廃棄物であると、判断される危険性もあります。
排はいき出事業者は排出事業者の責任の元、しっかりと情報は把握して、管理をしなくていけませんよ。

これでスッキリ!廃棄物とは ②に続く

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